盆栽を作るのに針金かけは重要な作業です。必ずしも針金をかけなくても芽摘みや剪定だけで育てることもできます。でも、針金が巻かれているからこそ盆栽に見えるとも言えるでしょう。
植物に針金をかけて曲げるなんてひどい、と思う方もいらっしゃるでしょう。確かに見た目はなんとなく針金で締め上げて無理矢理幹や枝をあらぬ方向へ移動させようとしているようです。でも実際は樹に大きすぎるストレスがかからない程度にしか針金はかけません。
針金かけは盆栽の完成形を思い描きながらの独特な作業です。技術を必要とするためマスターするのも簡単ではありません。技術だけでなく、植物の生態などの知識も併せ持たなくてはなりません。完成形に思いをはせながらの作業ですが、あくまでも植物の「生きる力」に沿った作業でなくてはいけないのです。
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江戸時代からあった整枝の技術
銅線やアルミ線を使って基本樹形を作るのが針金かけです。樹形を整えるほかにも枝葉に均等に日が当たるようにしたりムレを防ぐ風通しの確保という樹の快適性も確保する作業です。均等な日当たりや通風は樹の生育を左右し、花物などは花芽が付くかどうかという問題にも発展します。江戸時代から行われてきた整枝は、針金ではなく紐だったそうです。紐を枝や幹にかけて石などを重りとして樹形を作っていました。今よりももっと時間や手間がかかっていたということは、植物へのストレスも現在よりは大きかったとも言えますね。
針金かけに必要な道具
針金整枝の道具は、初めのうちは針金と針金切り・ヤットコがあればよいでしょう。
<針金>
幹や枝の太さによって番号を変えます。極端に太いと細かい枝に傷が付いたりするので、細めを選んで二重にかけるという方法もあります。大体の目安は幹なら8番(4.0㎜)以降、小枝なら18番(1.2㎜)以降ぐらいになるでしょう。長さは幹や枝などの針金をかけたい長さの1.5倍程度を使用します。ホームセンターで購入するか、インターネットなどの通信販売で購入するのが欠品もなくスムーズに入手できます。
銅線は幹の堅い松柏に向いています。弾力性が低いので太くかたい樹種向きと言えます。柔軟なアルミ線は初心者でも使いやすい針金で、比較的柔らかい樹種に向いています。
<針金切り>
針金を切る専用のハサミです。よく切れるのであると便利ですが、初心者のうちは工具箱のニッパーやペンチで代用すると良いでしょう。ただし、かけた針金を外すときはニッパーでは不足だと言えます。やはり専用の針金切りの方が作業がしやすく樹を傷つける心配が少なくなります。
<ヤットコ>
細かい作業にはヤットコが必要です。先細の形状なのでペンチでの代用は難しいですね。細い針金なら手芸用のヤットコでも代用できます。
針金かけの前に必要なこと
樹種によっても違ってきますが、まずは針金をかける樹が健康かどうかを良く見ましょう。元気のない樹に針金かけは論外です。植え替え後すぐや樹勢が弱い樹であれば、今年は針金かけを見送り来年にしましょう。
針金かけは幹や枝を湾曲させたりします。作業の前には水やりを控えて乾燥気味にする必要があります。また、湿度が高い場合も水分が枝が裂ける原因になることがあります。樹皮が薄い樹ではそのまま針金をかけずにかならず保護材を巻き傷つかないようにする必要があります。
かける順序は株元から順に上に向けてかけていきますが、かける技術の前に「樹形を決めておく」ということが大前提です。技術は動画サイトなどでも十分学ぶことはできますが、樹形を決めてから作業にかからないと樹に不要なストレスをかけることになります。
針金かけの要不要は何よりもその樹のことを考えてからの作業になるという考え方が大切です。