目次
毎年行うものでもない
松の類は、3月末頃に新芽が出ますが、その前に「植替え」をし、新芽が伸びる頃に「施肥」をします。7月に「芽摘み」をし、9月頃に「芽欠き」、11月に「古葉落し」で、翌年の1月に「新葉抜き」をするのが一連の作業となっています。黒松と赤松は、年間を通してほぼ同時期に同じ手入れをしますが、五葉松は、例外的にしか芽摘みをしません。松の類でも、若干作業に違いがあります。この芽摘みは、「みどり摘み」とも呼ばれ、必ず毎年行わなければならないものではありません。前年の新葉の伸びが悪い時は、芽摘みは行わず、もう1年様子を見ます。盆栽の手入れでは重要な、この盆栽松の芽摘みについて説明していきます。
芽摘みの目的
松の芽は摘まないで放っておくと枝分かれせず、よく伸びて葉も長くなります。この状態ですと盆栽としては美しくありません。芽摘みで枝の伸びを抑え、小枝を増やします。芽摘みの目的としては次の点が挙げられます。枝の間延びを防いで樹高を抑える、樹高と枝の配置をバランスを整える、樹の上部と下部の新芽生育の差を調節する、短い新梢をどの枝先とも平均して出させる、短葉でしまった新梢が出させることとなっています。芽摘みには各種の目的がありそれによって時期や方法が違ってきます。1回の芽摘みで全ての目的が達成できるとは限りません。芽摘みの目的を定め、それに応じた時期や方法を決めます。
芽摘み方法
芽摘みの方法は、幹や枝に対して直角もしくは水平に切ります。元切といって芽の元から切ります。枝の高さを揃えるためには、中芽切といって切り芽の中間で切る方法もありますが、次の芽の出が悪くなります。松の葉が全体的に勢いよく育っている時は、一度に全体を切る「一度切」をします。しかし、木は上に伸びる頭(天)が最も勢いが強くなるので、下葉を先に切り1週間~10日後に頭を切る「二度切」や、上中下の三ケ所に分け三度切る「三度切」などがあります。数回に分けて切る際は、頭を切るのをいつにするか判断し、その日から逆算して、一回目の切る日を決めます。時期としては、まだ新梢の新葉が開かない4中旬へ5月上旬頃に行います。培養しながら枝を増やし、しっかりした樹幹にし、間隔の詰まった枝作りにします。主に若木や樹勢の強い樹に行います。
芽摘みの後の芽切り
新梢が伸びきった6月下旬へ7月上旬に行います。今年に伸びた新梢を古葉のついている前年枝との境目からハサミで切り取ります。その後、出る芽は伸びが少なく葉もしまって短くなります。この芽切り法が開発されて以降、黒松などの中小品盆栽でも早期に完成樹に近ずけるようになりました。品位も高まり豪快さや繊細さまでも表現できるようになっています。芽切りは「短葉法」とも呼ばれ、完成樹や完成樹に近い盆栽の樹形を全体的に短葉でまとめるものとなります。
地域によって若干最適期が変わる
芽摘みは福岡県では、錦松は6月中旬、赤松は6月下旬、黒松は6月下旬から7月中旬までに行います。特に黒松は、短葉にするため遅い方が良いとされ7月25日までには終えるようです。地方によって時期は若干ズレがありますから、自分が住んでいる地域の盆栽店などに時期を尋ねれば、より最適な時期に芽摘みが行えます。芽摘みをする盆栽は、樹勢が元気なことが必要とされます。根に問題がある場合、植替えなどの樹勢の回復手段を講じます。さらにその年に植替えした松は、理由を問わずに芽摘みはしません。松の状態に応じて芽摘みをすることが肝要と言えます。