盆栽を育てるということは、その樹の個性を生かす樹形を作り出すことでもあります。また、日本には座敷で観賞するという風土もあります。座敷で観賞するには「床飾り」という飾り方があります。現代の家屋には掛物や道具がないことも多いですが、少しだけ雰囲気を出してみたいとも思います。
目次
筏吹き(いかだぶき)
多幹樹形のひとつで、幹が倒れてそこから出た枝が幹となる多幹樹形のことです。深い山に入ると樹が横倒しになり、たった枝が幹のように直立していることがありますね。「根連なり」という樹形よりも古いものだと言われています。
石付(いしつき)
石に気を植え付けたもののことです。石の形や植える角度などにより自然な味わいを高める樹形です。石の質感ひとつでも違った感じになりますね。盆栽鉢の上に石を乗せて沿わせたり、直接ケト土で付けるものがあります。自然な風合いをつぶさないように作りたい樹形です。根が土に届いているものを石付き、土に届かないものを石上樹と分けて呼びます。
株立(かぶだち)
ひとつの株から幹が複数立ち上がっている樹形です。枝付きなどの約束事が少ないため自然味溢れる盆栽ができます。ひこばえが出やすいボケなどを使うと作りやすい樹形です。
変わり木(かわりぎ)
多々ある樹形のどれにも当てはまらない形の樹です。決まりがないのは良いのですが、逆に目指す樹形もわからないという初心者にとってはよし悪しの樹形です。
曲付け(きょくづけ)
針金かけをして幹や枝を曲げること。「模様を入れる」とも言われます。
懸崖(けんがい)
盆栽鉢の縁・株元よりも梢がより低い樹形。梢が少し高いぐらいなら「半懸崖」と呼ばれます。岩場から身を乗り出すようにして生きる樹を表現します。根張りが良いものでないとバランスが悪くなります。五葉松や真柏・モミジなどが合います。
腰高(こしだか)
根元から一の枝(初めの枝)までが長いことで、ひょうひょうとした雰囲気を持つ形です。アンバランスさも持ち合わせた不思議な形です。
斜幹(しゃかん)
読んで字のごとく、株が斜めに立っています。かなりバランスを要求される樹形で、傾斜の反対側の根張りの強さが要求されます。
主木(しゅぼく)
メインに飾られる樹です。「席飾り」では一番目立つ場所に飾られて重要なものです。松柏類がおもに主木として飾られることが多いです。
神・舎利(じん・しゃり)
真柏に多くみられる木質部が朽ちて、幹肌などが白骨化したものです。枝なら「神」、幹なら「舎利」と呼び分けます。
席飾り(せきかざり)
床飾りや棚飾りなど、「盆栽飾り」の相称です。日本独特の「席」という観点から、限定された空間の端々まで意識して飾ることが重要だというものです。
双幹(そうかん)
根元は一つ、幹が二本出ている樹形です。二本の高さや太さのバランスが問われます。幹が高く太い方が主幹、低く細いものを副幹、幹の分岐点が根元よりも少し上のものを途中双幹と呼びます。
添え(そえ)
飾りに関する用語です。「主木(しゅぼく)」に対して飾られるもののことですね。主木の良さを引き立てる山野草類や雑木などが使われます。主木が右に流れるものなら添えはその流れに向かうもので受け止めるように飾ります。株立ちなど多幹が合います。
棚飾り(たなかざり)
箱型の棚卓(飾り棚)に数点の盆栽を飾ることで、小品盆栽によく用いられます。盆栽に限らず添え草などもバランスよく飾ります。
流れ(ながれ)
幹や枝の方向です。幹や枝の「流れ」が左右バラバラだとまとまらずバランスも悪いものになります。
箱飾り(はこかざり)
箱型の飾り棚を使って飾る棚飾りの種です。ワンルームなどでも飾りやすいのは箱飾りですね。
ハサミ作り
初心者さんにぜひ試していただきたい「ハサミ作り」です。剪定だけで小枝を作り、湾曲させたりすることがないため自然味溢れる盆栽になります。骨格作りにだけ針金を使用することもありますが、それすらせずに剪定だけでも盆栽を作ることができます。
文人木
ひょろりとしなった幹にアンバランスに見える枝葉をつける文人木は、日本のわびさびを一番よく表現できる樹形かもしれません。赤松や五葉松が代表的ですが、この文人木を作る数はわずかです。世の中のすべてを悟った仙人のような趣がある樹形です。
本鉢(ほんばち)
鑑賞目的で使用する盆栽鉢のこと。生育中に使用するのは培養鉢・仮鉢などと呼ばれます。釉薬をかけたり焼締鉢が使われるので水はけやガス交換が難しくなります。
模様木(もようぎ)
幹に模様が入った樹のことで、逆の用語は直幹です。模様といっても湾曲などのことで、縞模様などのこととは違います。
八ツ房(やつふさ)
自然にできる実生での突然変異や接ぎ木などで繁殖させたもので、普通の樹に比べて枝葉が詰まってできる品種のことです。小さくても大木の様相を現すのに適しています。「鹿島八ツ房」というもみじが有名です。