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樹の性質を理解して針金をかける
盆栽の写真などを見ると、針金が等間隔に美しく巻かれている姿はいかにも盆栽らしいと言えますが、あくまでも盆栽の形を作っている途中の姿なのです。針金かけは、未完成の盆樹を自分が理想とする樹形に近づけるための技術です。針金かけをすると、枝を適当に配って採光と通風を良くし、病害虫対策となり、樹勢の調整ができます。しかし盆栽をやる上で、針金かけをマスターすることはかなり難しいものとされます。植物の知識はもちろんのこと、センスや熟練度により見た目も価値も大きく影響されるからです。樹種によって針金かけは、適期や方法に違いがあり、若木、成木、完成樹、老樹でもやり方が違います。枝を曲げる針金かけは、樹に試練を課しますが、その樹の性質を充分に理解して行えば、無理なく思い通りの樹形に早く近づけることができます。この針金かけについて説明していきます。
針金かけの道具について
針金かけの道具には、少なくとも針金・針金切り・ヤットコが必要です。針金は枝の太さに合わせ数種類の太さのものを用意しておきます。この盆栽用の針金はホームセンターの園芸コーナーや盆栽園、展示会の即売コーナー、インターネット・ショップで入手できます。針金の太さはかける樹の幹や枝の太さで変わり、太過ぎると曲げにくく、細過ぎると効き目が弱くなります。極端に太い針金は細かい曲げができないだけでなく、枝を傷つけたり成長を止めてしまう原因にもなりかねません。実際の太さはその枝が固定できる範囲で細めのものを選びますが、枝が太くて合う銅線がない時は、針金を二重にかけて強度を増します。一般に使われる針金の太さは、樹の大きさによりますが幹でだいたい8~19番(4.0mm~1.0mm)、役枝で10~16番(3.2mm~1.6mm)、小枝で18番~22番(1.2mm~0.7mm)くらいです。小品盆栽では一番太いものでは、2.0mm~2.5mmくらいを使います。使う針金の長さも幹枝の太さや巻き幅で違いますが、だいたいかけたい幹枝の長さの1.5~1.7倍の長さで切って使います。
針金かけの時期について
スギやトショウを除く松柏類の針金かけは、木質部と形成層が密着している秋~冬の時期に行うと効果的とされます。落葉樹、花物類、実物類では、生育期間中が適し、新枝がまだ柔らかいうちに行うとより効果的とされています。葉物類や雑木類では樹皮も観賞するので、針金には和紙などを巻いて使ったりして樹皮が傷付かないようにします。葉物や雑木類は幹の太りが早いので、針金をかける期間も短くなります。針金は1~2ヶ月を目安に癖がつき次第取り外します。モミジは5月~6月に行い秋に外し、若木のうちにかけ、完成樹では新梢だけにかけます。ケヤキは2~3月の新芽前に行い、葉刈りしてものでは、5~6月に行い、樹皮が傷つきやすいので、1~2ヶ月で外します。花物類や実物類では生育期間中に行います。花や実だけでなく樹皮も観賞される樹種が多く、サクラやボケなどは枝が折れやすく樹皮が薄いので注意が必要です。花物類や実物類は、枝を針金で下げることで樹勢を抑え花芽をつけさせることもできます。梅は、新梢の伸びが止まる6月~7月に行い新枝にかけ、1ヶ月くらいで外します。桜は、若木はいつでもよく、成木は6月頃に行い、2~3ヶ月で外します。
針金かけのやり方
針金をかける順番は、基本的には下から順番に幹、大枝、中枝、小枝と順に細い部分へと巻いていきます。主幹を1本の針金で巻き、次に大枝、小枝へと徐々に細い針金で巻きます。強度を増すために2~3本の針金をまとめて主幹にかけ、枝分れの部分で1本づつ分ける方法もあります。これは針金が重ならないよう平行に巻くので、慣れが必要です。針金かけは、巻き始めの固定が重要で、始めが動くようでは、その後がうまく巻けても効果がでません。幹に針金を固定する場合、針金の先を地中深くまでさし込んで鉢穴まで通して固定します。2本の枝にかける場合は、主幹を中心に両方の枝に分けて巻くか、1本の針金で2本の枝にかけるようにします。いずれも短い針金をつなげるよりも、長い針金で巻くようにします。針金を巻く幅と間隔は基本的に等間隔で斜め40~45度くらいにします。
盆栽の基本技術
針金かけには、主に銅線やアルミ線を使います。枝配りを比較的短期間で自在に曲げられるので、様々な樹形作りに用いられています。針金で幹枝を曲げたり下げたりすることで、その枝の樹勢を抑え全体のバランスを取ったり、花物類や実物類では花芽形成にも影響を与えます。盆栽に模様を付けるための工夫は、江戸時代前からいろいろと行われていました。針金かけによる整枝法が確立する前は、紐などで枝を引いたり枝の間に石や板を挟んだりして樹形を作っていたようです。以前はかなり苦労して作っていた樹形作りですが、針金の登場により簡単にできるようになり、針金かけは瞬く間に広まりました。針金かけの技術は長い年月の経験や工夫で改良が重ねられてきています。近年では盆栽の基本技術となっています。