秋に手に入れた松ぼっくりから種を拾い、苗に育てる実生法について学びます。
目次
松の種の入手方法と発芽のさせ方
種から苗を作ることを実生法といい、木になるまで時間はかかりますが、立ち上がりが美しく自然で素直な盆栽になるのでおすすめします。
秋に黒松、赤松、五葉松、杉、檜などの木から直接松ぼっくりをとり、部屋に置いておくとかさが開き種を採取できます。
発芽に適した気温になる春か秋に蒔きますが、秋に入手した種をそのまま蒔くのが発芽率もよく生育もいいです。
春まで保管しておきたい場合は、湿度のない低温で管理する必要があります。
密閉できる袋に入れて、冷蔵庫に入れておくのが一番いいです。
松の種の発芽を成功させる2つの条件
・種子に吸水させる
発芽率を上げるには、まず種子に水分を吸収させることです。
水を入れた容器に種を入れ一晩置き、翌朝、水面に浮かんでいるものは取り除き、水分を十分に吸って底に沈んでいるものを選びます。
吸収を早めるため、種を入れた水は常温で管理しますが、水に殺菌剤を極薄く溶かしておくと病気の発生を防止できます。
・発芽に適した温度にする
発芽の適温は、樹種によって差はありますが20度前後が最適で、5度以下や35度以上になるとほとんど発芽しなくなります。
本来は、秋に採種したものをすぐに埋めて発芽を高めるのですが、低温処理の発芽促進法を利用しても高確率で発芽させることができます。
赤松の種を24時間浸水させ、0度で1か月保存した後蒔いたり、黒松の種を5度の温度下で1か月管理したりすることで発芽させやすくする方法です。
松の種の蒔きつけと用土の準備
種は浅めで口が広い鉢に蒔きます。
鉢に入れる用土は、水はけのいい砂が根の生長には最適なのですが、乾燥しやすくタイミングを間違えれば苗が栄養失調を起こすことになるので、赤玉土を選ぶのが無難です。
種自身が豊富な養分をもっていますので元肥を混ぜる必要はありません。
土の用意ができたら種を発芽後に込み合わないように間隔をあけて蒔きます。
蒔き終えたら上からフルイを使って覆土しますが、種の2倍の厚み分だけ土をかけるといいです。
蒔きつけが終了しましたら水を入れたバケツを用意し、そこに鉢の底をつけて静かに吸水させるか、穴の小さい蓮口でやさしく灌水します。
松の種を蒔いてからの管理
種は一度水に浸り、発芽の準備が整ってしまうと、乾燥や温度変化への適応力が下がります。
ですから種を蒔いた後は土が乾かないように管理して、鉢内の環境を変えないことは重要です。
秋に蒔いたものは2月ごろに芽が出始めますので、環境の変化に注意し、冬の間に霜柱によって根が傷んでしまわないように、しっかりと霜除けの準備をします。
縁の下の土上は、気温の変化もあまりなく、乾燥や寒さから苗を守るのに最適な場所ですので、利用することをおすすめします。
松の種の発芽から盆栽苗にするまで
種がもっている養分は発芽して1か月ほどで使い切ってしまいます。
ですので、早い時期に鉢にうつす鉢あげ作業をすることが苗作りの成功の秘訣です。
鉢あげでもっとも重要な作業は根を切ることです。
小さな苗が弱るのではと心配になりますが、発芽後の最初の葉(子葉)のついている間は根を切ってもすぐに新しい根を伸ばすので、丈夫な苗に育てるためには必ず根切りの作業をします。
よく切れるカッターで水平に根を切りつめ、鉢に埋めていきましょう。
思い切り短くすることで、根が横に浅く張り出し、浅い鉢に収まるような姿のいい盆栽に育っていきます。