松柏類の盆栽では、秋の肥料の施し方が木の生長を左右するといわれています。
黒松と五葉松盆栽のための肥料の与え方について学びます。
目次
黒松盆栽の春と秋の肥料
春に一度芽を切り、2番目に出てきた芽を使って樹形を作っていく黒松は、春先から肥料を多めにやり、短期間で芽の生長を促すようにします。
黒松の年間施肥サイクルは、4月に始まり11月まで続きますが、途中、植え替え作業後の1か月と梅雨時期は肥料を止めます。
植え替え後に肥料を控えるのは、植え替え作業で根を切った木に負担を与えないようにするためです。
また、梅雨時期に肥料を避ける理由は、長雨で鉢の中に肥料の成分が溜まると肥料焼けをおこす可能性が高まるからです。
4~11月の施肥量は、樹高が50cmほどの盆栽に対して4月に玉肥を4つ与え、翌月には6つに増やします。
秋口からは肥料を充実させる時期に入りますので、9月に玉肥を6つ置き、10月には8つ、11月は10個に増やしていくといいでしょう。
五葉松盆栽の春と秋の肥料について
五葉松は芽切り作業はおこなわず、伸びてきた新梢で樹形を作るので、春からの施肥は抑え気味にし芽や葉が伸びすぎるのを防ぎます。
盆栽の様子によっては春は肥料をやらず、秋に幹元に置くだけでもいいでしょう。
8月上旬ごろから、芽が固まり始めます。
芽の固まり方は「はかま」を見ることで確認できます。
五葉松は名前の通り、5本で1本の単葉となっていますが、この5本の根元を束ねている薄い皮をはかまといいます。
このはかまが自然に落ちてきたら芽が固まったとみて、施肥を始めましょう。
樹高が50cmほどの盆栽でしたら、8月に3~4個の玉肥を置き、翌月はそれに2個増やし、10月にも2個追加した7個くらいを与えます。施肥は10月いっぱいまでで11月にはおこないません。
肥料の量は樹種によって決めるのではなく、あくまでも樹勢の強さに合わせて決定するのが基本です。
基本の盆栽肥料は玉肥が一番
油粕を主成分とした有機肥料で、松盆栽だけでなくあらゆる木に有効な効果をあげるのが玉肥です。
鉢のへりに置くと灌水をしたときに有効成分が少しずつ鉢土に溶けだして、ゆっくりと効果を発揮します。
施肥から1か月から40日くらい経ち、固形だった玉肥の形が崩れたら交換します。
与え方は、鉢や木の大きさだけを基準に考えるのではなく、樹勢の強弱を考慮することが重要です。
弱っている木に肥料を与えるのは、病気で消化能力が落ちている人に栄養過多な食事を提供することと同じだと考えてください。
木の体力に合わない肥料を与えると、かえって悪影響を及ぼすことになりますので、樹勢の様子を見て判断することが大切です。
樹勢の強さを判断するには、葉の色と芽の伸び方を見るといいでしょう。
葉の色が黄色になったり生気を失ったような緑色に変化していたりしていたら、病気や虫の被害を受けていることが考えられますので、一度肥料を外し木を観察しながら様子をみていきましょう。
芽の生長が悪いのは樹勢の弱さを物語っているので、肥料を抑えなくてはいけません。
時期によっては液肥も併用する
苔の上に玉肥を置くと焼けてしまい、その部分の苔は黒く汚れてしまうので液体肥料の使用をおすすめします。
水に薄めて使うだけですぐに効果が出るので、玉肥の交換が遅れてしまったときや肥料を外している時期には、積極的に使って盆栽に活力をつけましょう。
ただし、有効成分を多く含んでいるため、説明書どおりに薄めて使わなければ木が枯れてしまうので注意してください。