松柏類盆栽の植え替えの基礎と実践

剪定や針金かけのほかに植え替え作業も盆栽作りには必要不可欠な作業です。
松柏類盆栽にふさわしい植え替えについて樹種別に学びます。

目次

松盆栽の植え替え適期について

3月に入り霜が降りなくなったら、盆栽の様子を観察し植え替え作業の準備をします。
観察のポイントは2つあります。
枝の細部を見て芽に少し動きがあるようでしたら、木が休眠から覚め生長しようとしている時期なので、本格的に活動を始める前に植え替えます。

また鉢の中の土が盛り上がってきていて、水やりのときに水が鉢の外へ流れてしまったり、土の表面が水をはじくようになったりしたら、幹元の根のあたりを触ってみましょう。
土が固くなっているのを感じたら、鉢の中で根が回ってつまっている証拠ですので植え替えが必要です。

植え替え時に鉢から盆栽を抜くための道具

鉢の形状や土中での根の回り方によって木を鉢から抜くのが困難になります。
根や木、鉢までも傷つけてしまうことがあるので、ふさわしい道具やコツを駆使した作業が重要です。

・根切りカマ
様々なサイズがあり、鉢の形や木の大きさに合わせて持っていると作業が格段にしやすくなるので、盆栽専用のものを1つは用意しておくといいでしょう。
土や硬い根を切るため歯が傷みやすいので、小まめに研いで使用します。

・ヘラつき熊手
根の間にある土をかき出すだけでなく、ヘラを使えば鉢から根を起こすときに便利です。

・竹ベラ
竹から自作すれば歯あたりがやさしいヘラになり、土のかき出しや根起こしのときに鉢や木を傷めないのでおすすめです。

・ピンセット
コンパクトな根切りカマとして使いやすいので、先の曲がっているピンセットは持っておくといいです。

盆栽が抜きにくくなる2つの原因

1つ目は根の状態にあります。
松柏類は植え替えに数年おくことがあるので、根が増え鉢いっぱいになっている場合や、走り根といわれる勢いよく伸びた太く長い根が鉢底にはりつき悪さをしていることが多いです。

2つ目は鉢の形です。
浅い鉢は簡単に抜けるのですが、深さがあり角がある長方や正方の鉢は難しく、ふちや鉢の胴の形も関係してきます。
とくに鉢のふちが「抜け止め」といった内側に折れている状態のものは、このでっぱりが邪魔をして鉢根を抜きにくくします。

鉢から抜く作業1 鉢内側の土を取り除く

カマを鉢の内側に沿って入れ、鉢壁と根を切り離すように溝を掘っていきます。
鉢に傷をつけないようにするため鉢の壁に刃を差し込み、幅3cmほどの溝を彫り込んでいきます。
この工程を丁寧におこなうと後が楽になるので時間をかけて作業しましょう。

あまり根が張っていない盆栽ですと鉢の周囲の角に溝を掘るだけでも抜けますので、まずは隅の土を掘り出し、様子を見ながら周辺をぐるりと回しながら掘り進めることをおすすめします。
鉢底に走り根が伸びている場合は、その根を切らないと鉢から抜くことは不可能ですので、深さのある鉢の場合は、鉢底まで届くような刃渡りの長いカマを使って作業します。

鉢から抜く作業2 荒皮を剥がさないように引き抜く

鉢の上で木を揺らして根が離れている状態を確認出来たら、いよいよ鉢から抜く作業です。
このとき注意しなければならないのは、せっかく出来上がった松柏盆栽特有の荒れた幹皮を落とさないように抜くことです。
ヘラを根の底に深く差し入れ、テコの原理を使って持ち上げます。
このとき荒れた幹に触らないように、木の上冠部や下のほうにある太い枝を持って木を傾け、根の底面に手を当てながら引き抜きましょう。