落款が真贋の切り札になる

盆栽を続けていますと盆栽鉢にこだわりや欲が出てきます。より良い鉢は、高価な鉢の場合もあります。自分が気に入った形などで選ぶのでしたら、作家とか銘にこだわることはまずないでしょう。しかし、作家などの作風で選ぶとなると話は違ってきます。その作家などが著名であればあるほど、注意したいのが鉢の真贋です。人気の作家の鉢は、高くなるのは言うまでもありませんが、一目でその作家の盆栽鉢とわかっても、それが本物かどうかは、詳しく落款を見なければわかりません。落款には重要な役割があるわけです。鉢の落款が大いに頼りになりますが、それでも本物も偽物もたくさん流通しています。落款さえも真似をし、真贋がわからなくなることもあります。どの世界でも偽物とうまく付き合っていかなければならないようです。この盆栽鉢の落款について説明していきます。

落款「竜岳造印」

口径が二尺を越える超大型南蛮鉢が有名で、これほどの大きさの南蛮鉢はかなり貴重とされています。胴紐の意匠に柔らかな型は素朴な仕上がりで適度な深さもあり、使い勝手が抜群とされます。竜岳とは、南蛮、陶板、草鉢などを手掛けた丸恒製陶所のブランドです。常滑の中でも備前焼に近い強い土を使い素朴な風合いの鉢を生み出しています。現在は作られておらず、新規入手が困難なため貴重品扱いされているものが多数あります。

落款「三峰」

常滑泥鉢の名手として知られる斉田三峰の落款です。代表作は長方鉢で、型の良い胴紐長方は樹を選ばないので、用途の広さが魅力とされます。常滑烏泥の綺麗な土目に使い味も十分な逸品が多く、二尺近い大型で貴重な一枚もあります。斉田三峰は本名を斎田三代造と言い、長く伊奈製陶(現INAX)に勤め、1965年独立しています。盆栽鉢の制作は74年から始め、当初は押型製法による泥鉢を主体としていましたが、タタラづくりの注文制作へシフトしています。押型量産品、手づくり品ともに泥鉢がほとんどを占め、型は長方、楕円、手づくりでは六角、古鏡型、木瓜など、数多くの型をこなします。サイズ的に大鉢が多く、押型品には押印款、手づくり品には釘書款と使い分けています。

落款「角山造印」

高砂庵・岩崎氏の特別オーダー品で70cmを優に超える大型の楕円鉢が有名です。薄手ながら寸分狂わぬ仕上がりに技術の高さが伺えます。角山は常滑の中でも大型鉢の制作に定評があります。この代表作には常滑烏泥の綺麗な土目に20年前後使い込まれた時代感を見せる味わいがあります。大型松柏の根連なりに最適です。角山は、本名を渡辺角幸と言い、常滑高校窯業科卒業後、父の渡角製陶に入社し昭和58年頃から釉色鉢を手がけています。現在は釉鉢・泥鉢ともに作り、大物鉢の分野で腕を振るう実力者として知られています。泥色は常滑烏泥、尚和泥のほか、型・泥色ともに豊富です。これまでに宮内庁に二度、10枚ほどの鉢を納めている実績があり、現在は注文制作のみに対応しています。

落款一つにも味わいがある

有名な落款を挙げてみましたが、落款として語らずにはいられないのが平安東福寺です。平安東福寺は本名を水野喜三郎と言い1890~1970年没の作家です。現代の名高い名鉢に「東福寺鉢」があり、盆栽鉢の最高峰とも言われています。盆栽鉢の形の種類も大小も豊富で、大鉢や豆鉢、更には水盤もあります。独創的で幅広い作品を作り、泥ものも製作しています。釉薬の使い方が上手で、多彩な色のものも多いです。落款については、角形篆書体「平安東福寺」、楓落款「東福寺」、円枠丸ゴシック体「東福寺」、釘書「東福寺」、明朝体「東福寺」、楕円枠行書体「東福寺」。更にこれらの複数個を入れた物も多いとされています。「東福寺鉢」は人気のある作品で、今でも多数の作品が流通していますが、偽者も多く流通しているので、落款を詳細に見る必要があります。有名の度合いが落款にも反映されるようです。