鉢の底に近い側面や鉢裏に判を押したような文字を見つけることがありますが、それは落款といいます。
落款がもつ意味や種類について学んでいきます。

落款は証明のための判

落款とは創作物が仕上がった最後に作品に記す「印」のことです。
作品が出来上がったときに自作したという証明と、その作品にもつ責任を込めて押印するもので、製作者の名前か雅号(創作をおこなうものが作品に記すために作った本名ではない風雅な名)である場合が多いです。
書家が書画を完成させた後、赤く記す落款は有名ですが、盆栽鉢でも同じ意味合いで使われています。
粘土で鉢を形成した後に石を彫って作った落款で押印したり、鉢に釘で彫ったりします。
作家によっては鉢に釉薬をかけて一度焼いた後、2度目の焼成の前に鉢肌に筆で記名することもあります。
石材落款の種類は文字が白抜きになる「白文印」、反対に文字以外が白抜きになる「朱文印」、
長方形の形をした「関防印」などがあります。

東福寺の盆栽鉢とは

盆栽家の垂涎の的となっているものに「平安東福寺」の雅号をもつ水野喜三郎という職人が作った鉢があります。
東福寺は明治に生まれ、生涯貧しい暮らしをしながらも懸命に鉢を作り続けました。
窯も自分のものではなく、京都の東山付近にある清水焼専用の窯を借りて細々と焼いていました。
東福寺の作る鉢は目立たない素朴なものが多かったため、当時、その価値を理解できる人はごくわずかでした。
東福寺がなくなり10年ほど経過した後、その素晴らしさは認められるようになりました。
東福寺鉢は初代と2代目にわたり多く焼かれてきましたが、その大きな魅力と現存する数に限りがあるという理由で、現在は高値で取り引きされています。

東福寺の落款について

数万個は焼かれたといわれている東福寺の鉢は、多種多様な落款をもつことでも有名です。石材落款で押されたものや釘を使って記されたものなど合わせて、20種類以上の落款があります。
高い値段で売買されるようになった東福寺の鉢は、証明書代わりになる落款の存在は重要です。
落款についての研究はあちこちでされておりますが、文字の特徴、落款印の形、落款が押された場所などについて、真偽が問われることは多いです。

陶翠の盆栽鉢と落款

東福寺の鉢は個人の焼いたもので落款も個人をあらわすものになっています。
一方、個人ではなく、その鉢を焼いた窯の名前を落款として記しているものもあり、盆栽の鉢ですと「陶翠」のものが有名です。
明治のころから愛知県の瀬戸にある陶翠園の窯で、腕のいい職人により盆栽を際立たせるよい鉢がたくさん焼かれてきています。
主に鉢作りに携わっていたのは水野春松と水野正雄、二人の兄弟で、大きな鉢ではなく小ぶりで使いやすいサイズのものを大量に作っていました。
落款を見ますと石材落款を使って押したもの、釘を使って彫ったもの、筆を使用して書き記したものなどがあります。

盆栽鉢の偽物落款の見分け方

東福寺を欲しがる人は多く、高価な鉢なので偽物はたくさん出回っています。
見分け方にも様々あるようですが、手捻りという方法で作られた丸い鉢に限っては、東福寺は鉢の底、左の際部分に落款することが多かったため、右側に捺印されたものを見つけた場合は疑ってみることも大事です。
また陶翠も古い鉢ほど値段が張るので偽物も多く出ています。
陶翠鉢には特徴がありますから落款に注視するだけはでなく、陶翠窯の個性が出ているものか確認することが重要です。