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盆栽の土(用土)選びが生き生きとした盆栽の作り方につながる
盆栽を生き生きとした美しい状態で維持するためには、用土選びが欠かせません。
また、盆栽の生長に合わせて植え替えをするときに、用土も新しいものにすれば、より盆栽を元気にすることができます。
そんな盆栽の用土にはさまざまな種類があり、みな違った個性を持っています。
用土の種類と違いを理解することで、自分の盆栽にあった用土を見つけましょう。
盆栽の作り方:用土の選び方の基本
盆栽の用土を選ぶうえで重要となるのが、通気性や排水・保水の良さです。
しかし、これらは盆栽を育てる環境(置き場所や気候)、または水やりの回数などによって違います。
つまり、ひとつひとつの盆栽に適した用土を用意する必要があるということです。
そうなると、1種類の用土で必要な条件を満たすことは難しくなります。
そのため、複数の用土を混ぜ合わせて、盆栽の個性にあった用土をつくらなければなりません。
こうしたことから、盆栽の作り方を知るうえで、自分の盆栽の個性と盆栽用の土の種類や特徴を身につけておく必要があります。
盆栽の用土:赤玉土の特徴
赤玉土とは、盆栽を作るうえで最も使う機会が多い用土です。
深層火山灰土の赤土を砕き、粒状にしています。また、粒の大きさによって「小粒」や「極小粒」といった種類分けされているのも特徴です。
基本的には排水に優れ、通気性も良く、保水する力もあります。
つまり、盆栽の用土に必要な条件をすべてバランスよく満たしているということになりますね。
ただし長期間おなじ赤玉土を使っていると、粒がつぶれてしまい、排水が悪くなってしまうので注意が必要です。
盆栽の用土:鹿沼土の特徴
赤玉土につづいて、盆栽の用土としてよく耳にするのが鹿沼土です。
鹿沼土は、栃木県の鹿沼地方で産出された粒状の土です。
赤玉土以上の保水性があるといわれ、また通気性にも優れています。
ただし乾燥に弱く、乾いた時期が長引くと、吸水性が大幅に弱くなってしまうのが欠点です。
また、保肥力も弱いため、こうした欠点をほかの土で補う必要があります。
盆栽の用土:腐葉土の特徴
腐葉土は、木の葉や枝が腐食したものが長い年月をかけて土状になったものです。
そのため保肥性に優れており、土の状態を改善するための堆肥(たいひ)として用いられます。
このほか、他の用土と混ぜると通気性や保水性をプラスする働きもあります。
盆栽の用土:水苔の特徴
水苔とは、湿地に生えている苔の一種です。
保水性に優れているので、鉢の中の土を覆うように使うことで盆栽を乾燥から守るのに役立ちます。
盆栽の用土:砂類の特徴
盆栽の用土では砂類の活躍も見逃せません。盆栽に使用される砂類は、日本各地の川や山から産出されています。
一般に通気性や排水性に優れているのが特徴です。地域によって販売されている種類が異なりますので、お住まいの場所で入手しやすいものを選びましょう。
ワンランク上の盆栽の作り方:植え替えの時期に用土も見直しを
盆栽が大きくなり、鉢の縁よりも土が盛り上がってしまった。あるいは、鉢の底から根が飛び出てしまっている。
こうした傾向が見られるときは、盆栽の植え替えのベストタイミングです。
盆栽の植え替えはそう頻繁に行うものではないので、こんな機会だからこそ用土の見直しもしましょう。
とくに粒状が特徴の赤玉土や鹿沼土の粒がつぶれていないかは注意してください。
新しい土に変えることで
ほかにも有機肥料の働きがある腐葉土を新しく替えることで、盆栽への養分がスムーズに行き渡るといったメリットもあります。
盆栽の樹木を引き立たせてるおすすめの鉢と鉢型の選び方は、「樹種と鉢色」と「樹形と鉢型」の2選です。この2つの鉢色と鉢型の選び方は、盆栽の樹種や樹形を引き立たせる上で必要な作業です。
盆栽の樹種を引き立たせてくれるおすすめの鉢色
盆栽の「樹種と鉢色」にポイントをおいた組み合わせは、樹種の特徴が引き立つ鉢色を選ぶことがポイントです。
黒松、赤松、錦松、五葉松などの松柏類の盆栽は、枯淡感を味わう樹種の盆栽です。松柏類の盆栽の樹種が引き立つ鉢色は、「泥もの」と呼ばれている色です。この「泥もの」には、朱泥、紫泥、梨皮泥、烏泥、紅泥、南蛮などがあります。松柏類の樹種を植える盆栽鉢の鉢色の多くは、これらの泥もの色をした盆栽鉢が使われています。これらの泥ものの鉢色は釉薬がかかっていないので、釉薬がかかっている「色物」の盆栽鉢と比べて渋さがあります。また、松柏類の樹種を泥ものの盆栽鉢に植えると、落ち着きと品格が引き立つので、松柏類の樹種の盆栽を上品に見せることができます。
もみじ、欅、楓、ブナ、イチョウなどの雑木類の盆栽は、あまり派手でない釉薬のかかった色鉢がおすすめです。雑木類の樹木は、新緑、紅葉、寒樹など四季折々に変化をするので釉薬が控えめにかかった色鉢に植えると、それぞれの四季の変化を引き立たせてくれます。
桃、かりん、姫リンゴなどの実もの盆栽やカイドウ、桜、さつきなどの花もの盆栽は、実や花にポイントをおいて楽しむ盆栽の樹種です。そのため実や花の色を引き立たせてくれる鉢の色を選びます。実や花の色と鉢色が重ならない色であれば、釉薬がかかった色鉢でも組み合わせることが可能です。
盆栽の樹形を引き立たせてくれるおすすめの鉢型
盆栽の「樹形と鉢型」にポイントをおいた組み合わせは、樹形の素晴らしさが引き立つ鉢型を選ぶことです。
字の如く幹が真っ直ぐ伸びている「直幹」と呼ばれている樹形の盆栽は、長方形や楕円形をした浅鉢がおすすめです。ポイントは、幹の太さに応じて鉢が深い型のものを選ぶことです。また、鉢型の中でも縁のある鉢に「直幹」の樹形の盆栽を植えると、安定感があり樹形の力強さも引き立ちます。また、同じ「直幹」の樹形の中でも樹齢年数が若く幹が細い樹木は、短冊型の鉢がおすすめです。
一般的に幹が直幹のように真っ直ぐ伸びていない「模様木」の樹形は、縁のないすっきりとした盆栽鉢がおすすめです。しかし、幹が太い模様木の樹形をした樹木には、長方形や楕円形の鉢に縁と足がしっかりついている鉢ががおすすめです。また、模様木仕立ての樹形の樹木は、全体的に浅めの鉢の方が、樹形の美しさを引き立たせてくれます。
幹が下の方に下がった樹形をしている「懸崖」の樹木は、深さのある桝型、丸型、六角型の盆栽鉢がおすすめです。深さがある盆栽鉢に懸崖の樹形をした樹木を植えると、樹木が安定します。
幹が斜めに傾いている「斜幹」の樹木は、一般的に南蛮型、あるいは皿型と呼ばれている盆栽鉢がおすすめです。これらの鉢型は、斜幹の樹形をした樹木の特徴を生かしてくれます。また、浅い楕円形の盆栽鉢も斜幹の樹木を引き立たせてくれます。
盆栽の樹木と鉢の組み合わせは双方のつり合い具合の調整が難しいですがぴったりと合った場合は、素晴らしい盆栽に変化します。そのため盆栽の樹木を鉢に植える際は、「樹種と鉢色」と「樹形と鉢型」にポイントをおいて鉢を選ぶことが大事です。
梅の品種は200とも300とも言われています。簡単には実梅と花梅とに分類できます。九州に自生していたという説もありますが、実際のところは中国原産説が有力なバラ科サクラ属の落葉小高木です。
日本では奈良時代から生息し、江戸時代ごろから盆栽として栽培され親しまれてきました。日本の気候にも良く順応するため、比較的入手しやすい樹種で年末になると園芸店やスーパーの店頭にも寄せ植えとして並びます。それを購入して育てるという方法もアリで、決して寄せ植えだから悪かろうなどということはありません。幹が太めで枝の多いものを選べば盆栽として作ることは十分可能です。
月影(つきかげ)
白花で家紋の梅鉢のような美しい花です。蕾はや淡いグリーンを帯び、雄しべの黄色とほの青い花びらのコントラストが美しい品種です。小品盆栽に仕立てやすく、15センチぐらいの樹高でも十分な花付きが魅力です。日本各地にある梅園でも育てられている月影は特に花弁の美しさから気高い女王のようだと表現されます。野梅の性質で緑色のままの枝に花が付くことから、日に透けて一層の青白さを見せます。
大盃(おおさかずき)
大きな一重の花をつける大盃は紅梅の代表です。とても雄しべが長く、鮮やかなショッキングピンクと相まって圧巻の美しさを誇る品種です。年明けから蕾が大きくなり始め、厳寒の2月には満開になる早春にふさわしい梅です。
雲龍梅(うんりゅうばい)
蔓のような枝が風に乗って舞う龍のようにのばすことからこの名がつけられました。花は白色の八重咲で派手さはありませんが、幹や枝の容姿に風流な趣のある品種です。
緋の司(ひのつかさ)
しだれ梅で花は紅色の八重咲です。中輪でややぽってりとした花弁と長い雄しべが特徴です。とても鮮やかな色で、紅色というよりも緋色という方が似合うでしょう。3月中旬まで滝のように枝垂れた枝に香りのよい花をつけます。
満月しだれ(まんげつしだれ)
一重咲きで野梅性の真っ白なしだれ梅です。やや早咲きの中輪で、枝の伸びと花付きがとても良いことが特徴です。花弁の色がとても美しく、「満月」という名がふさわしい真円に近い花びらの先が淡く紅色を持ちます。花1輪でもとても美しい色味です。
思いのまま
紅白咲き分けの野梅性の美しい品種です。変わり種がお好きならぜひこの「思いのまま」は手に入れたい品種です。野梅性は原種に近いため、枝がか細くとげとげしい小枝が多いことが特徴です。香りが高く葉が毛でおおわれていないことが特徴です。通常は接ぎ木をしたらその部分だけの花色が違うというものが多い中で、この品種は接ぎ木なしで紅白の美しい花を咲かせます。
梅盆栽は原種に近い野梅性が品があることで人気が高いとされています。比較的小さく育てても古木風になりやすいため、苔玉に仕立ててインテリアに取り入れることもできます。樹形を作りやすいためさまざまな形に仕立てられますが、重厚感のある幹とはかなげな枝や花の姿は「文人作り」にするととてもやわらかな印象が演出できます。
出来上がった梅盆栽を見るととても手が込んでいて複雑に見えますが、用土は赤玉単用でも育ってくれる優秀な樹種です。「桜伐る馬鹿梅伐らぬ馬鹿」という言葉があるように、梅は強健な性質で少々荒っぽい剪定をしても立派に育ってくれます。