誰もが思い浮かべる盆栽と言えば「松」でしょう。盆栽は樹種や大きさなどによっていくつかに分類されていますが、「松柏盆栽」についてご紹介します。常緑針葉樹でつくる盆栽を「松柏盆栽」と呼びますが、四季を通じて目にもまぶしい細い青葉が茂ることが魅力です。幹は年月の経過によって美しさを変化させて、どっしりと鉢に構える樹形が何とも言えない深い味わいを醸し出します。

「松柏盆栽(しょうはくぼんさい)」とは

五葉松や黒松の盆栽は雄大さと時の流れを感じます。いちばん人気があるのにはその風貌ですが、それ以上に常緑樹の育てやすさも影響しているかもしれません。生育はとてもゆっくりしていますが、長年手塩にかけて育てているという実感と愛着がそうさせているのかもしれません。

「松」と名の付く五葉松・赤松・黒松・錦松をはじめ、新芽の時期が特に美しい蝦夷松(えぞまつ)や一位(いちい)・檜・矮鶏檜葉(ちゃぼひば)などが松柏盆栽の代表的な樹種です。

幹や枝の一部分が年月により枯れて木質がむき出しになったような格好を作ることが特徴です。これを「舎利(しゃり)」「神(じん)」と呼びます。

松に始まり、松に行き着く

縁起物には多く松が描かれていますし、着物やふすま絵にもなっています。これは青々とした美しい葉が永久に続くようにも見えることを、繁栄になぞらえたものだとも言えます。その家々の幸福が永遠に続くようにという先人たちの思いが松柏盆栽を作ったのでしょう。かなり育て方が難しく見えますが、松自体の性質が比較的育てやすいのです。沿岸地域では防砂林や防風林としても利用されているほど性質が強いことも特徴です。高い保水力と生命力を持った松は水やりや肥料が思ったよりも少なく、育てる工程も初めての盆栽として扱いやすいものです。

眺めていて最も侘び寂びを感じられるのは古木でしょう。まるで一枚の水墨画のように雄大な気品を一鉢で表しているものがあります。盆栽鉢の中に悠久の大地を現し、自然の厳しさを幹や枝の舎利や神で表現しています。懸崖のように崖からせり出すような姿の古木は圧巻としか言いようがありません。育て方によって一味も二味も違う樹を表現できるところが、数々の盆栽を作り上げた愛好家も最後には松に行き着くという所以なのかもしれません。

松柏盆栽の王様、黒松

松柏盆栽の人気を五葉松と共に二分しているのが黒松です。荒れて黒みを帯びた幹が美しく、強さを満たした針葉が特徴です。静かな中にも荒々しさを秘めていることから「男松」と呼ばれることもある強さを体現した松です。性質はとても育てやすく、樹の勢いも強いため松柏の中でも扱いやすい樹種です。五葉松よりも葉の1本1本が長くて粗さを持っており、樹勢の強さを利用して安定感のあるものから細い幹で懸崖に仕立てても趣があり、黒松ひとつで様々な樹形を考えて作ることができます。盆栽鉢は落ち着いた色味と質感の泥物鉢がおすすめです。日本全国どこの気候にも合いやすいことから、多くの盆栽ファンに栽培されています。

黒松や五葉松などは成長の速度がとてもゆっくりしていますが、芽は時期が来るとどんどん伸びて茂ります。毎年きちんと芽摘みや芽切り・芽起こし・芽かき・葉透かしなどの「芽」に関する作業を定期的に息長く続けていくことが美しく整然とした松柏盆栽に作り上げるコツです。