厳冬の梅に春の桜、初夏の皐月(サツキ)に真夏の百日紅(ヒャクジツコウ・サルスベリ)などが花物盆栽ではスタンダードな樹種です。なかでも梅は縁起物としても知られていて、贈り物にも最適です。花の咲く時期も花の色もそれぞれがすべて違って香りも良いことから、樹形もさることながら鼻と香りも同時に楽しめるのが「花もの盆栽」の特徴です。

新春に香る梅は初心者におすすめ

白梅・紅梅など花色の種類もさることながら、なんと言っても香りがよい梅は新春の縁起が良い花物盆栽です。暑さにも寒さにも負けず、ミニ盆栽のサイズでもとてもよく花が付くところが人気の理由でしょう。八重に一重、枝垂れなど好みのものを探すのも楽しいですね。野梅は花が上品ですし緋梅は真っ赤な色が色の少ない冬にとても美しく映えます。花だけでなく幹にも味があります。数年でもう古木のような姿を見せる梅は、初心者でも見栄え良く難しさもあまり感じずに育てられるところがおすすめです。

長寿梅は梅じゃない?

「長寿梅(チョウジュバイ)」も花物盆栽の人気樹種です。「梅」と名が付きますが実は梅ではなく「野ボケ」の一種です。ボケも華やかな雰囲気があり人気樹種のひとつですが、長寿梅は幹の太りはボケと比較してゆっくりしていますが枝の細かさと多さで作りやすさが勝ります。花色は赤と白がスタンダードです。

日本の象徴、桜

普段植物に興味がない人でも桜の時期には花見に行くことが多いものです。桜の花がすべて下を向いて咲いているのは、地上から眺める人のためだという話もあるほどです。青空の下で見上げる桜はまさに「桜色」の格別の美しさがありますね。その桜を盆栽に仕立てて自宅で愛でるのも日本人ならではの楽しみです。小ぶりな葉が特徴の富士桜や害虫に強いといわれる山桜などが人気です。定番の一才桜は小ぶりですが八重の花を毎年咲かせるかわいらしい樹種です。八重桜は盆栽として作っていても花の時期は他にない豪華さ、枝垂桜は控えめな美しさなど桜盆栽はとても奥が深いものです。梅と同様に小さいうちから古木感が漂う、日本人なら一度は育ててみたい樹種です。

花物盆栽の隠れたスタンダード:サツキ

盆栽の中で最も日本人に親しまれているのはサツキです。園芸品種は1500種を上回るほどで、その人気の高さがうかがえますね。小さくかたい葉を持ち、山中の渓流などの岩の上に自生し渓流植物の性質を備えています。旧暦の五月ごろ、一斉に花を咲かせることから「皐月」と呼ばれるようになったようです。道路の中央分離帯や生垣にもなるほどの強い性質と旺盛な生育欲を持ち合わせていて、育てやすい樹種と言えます。人気の高さから園芸用に乱獲されていた時期があり、原種は絶滅の危機に瀕しています。透明感のある花は多彩な色を持っています。またひとつの花が1色ではなく2色になる「咲き分け」などがありその美しさはとどまるところを知りません。
樹高もそれほど大きくならず日本で自生している樹種であることと、芽吹きがとても多く小さな失敗も手直しがしやすいことなどから初心者にはもってこいの樹種です。

猿が滑って登れないからサルスベリ?

幹肌のコルク層がはがれてすべすべの滑らかな肌を持つサルスベリ。実際のところ、猿は滑らずに登れるそうです・・・「百日紅」と書くのはその花の赤さが長く美しいことから来ています。7月ごろから咲き始めるサルスベリも盆栽で作ることができます。街路樹や海岸沿いの植栽にもなるあたりは性質の強健さをうかがえます。縮れた花が特徴的で、小さい鉢で作れば樹高も小さめに仕立てることができます。夏に開花を迎える盆栽は数えるほどしかありませんので、サルスベリを一鉢育てておくと目の保養に良いですね。花の時期に芽を切り戻しておくと再度開花するので楽しみが長続きします。

他にも藤色の花が舞妓さんのかんざしのように下がるフジや四季咲きの好丁木(コウチョウギ)、淡い色合いが雨の時期を彩るヤマアジサイなども花物盆栽にはあります。
四季の彩や香りを「花」で楽しむ花物盆栽を始めてみてはいかがですか?