鉢は盆栽演出の要

盆栽は植木鉢に植えた植物を楽しむだけではなく、その植物が本来置かれた自然や小宇宙を表現した芸術作品です。それを演出するのが盆栽鉢と言えます。盆栽鉢には、大地として木を支え潤いを与える役割と木を引き立てて風景を作る二つの役割があります。鉢の選び方によっては、盆栽の世界が素晴らしい広がりを見せることもありますが、一方で全体のバランスを崩して世界観や芸術性を台無しにすることもあります。また鉢の構成部位としては、縁、隅または角、胴、尻、足などから成り立っています。この盆栽鉢の種類や形状は多岐にわたりますが、鉢の各部位についても絡めて説明していきます。

縁の種類について

盆栽鉢の縁の形状には「単縁(ひとえぐち)」「内縁」「外縁」があります。単縁は「切立(きったて)」とも呼ばれ、鉢の縁が外に反ったり内側に曲がっていない形状を指します。内縁は盆栽鉢の縁が内側に折り込まれている形状で、盆栽の中身が抜けにくい反面、植え替えの際は苦労するようです。外縁は鉢の縁が外についている形状で、縁に手がかかりやすい利点があります。外縁が丸いものを「玉縁(たまぶち)」といい、やさしい雰囲気の鉢となります。また上から見た縁の形には、長角(長方)、小判(楕円)、丸、正角(正方)、モッコ(木瓜)、六角、八角、花形、古鏡、輪花(りんか)などがあります。

角(隅)について

角は隅とも呼ばれる部位で、四角い盆栽鉢の角の形状を指します。長方形の角のように直角のものもありますが、角の部分が内側に入り込んだ「隅入」または「入角」があり、これは装飾性に富んだものとなります。さらに角が丸い形状の「撫角(なでかく)」、八角形の角のように角を斜めに切ったものを「隅切」と言います。この角に特徴のある盆栽鉢は、松などの演出に使われことが多いようです。

胴について

胴の種類は数が多く代表的なものでは、太鼓、鉄鉢、南蛮、反形、切立、碗形、袋形、陣笠、鋲打、クラマなどがあります。「太鼓」は、和太鼓のような鋲が入っているものを指し、「帯」「胴ひも」と呼ばれるものは鉢の胴の周囲に帯ひもを巻いたような彫刻がされています。「袋形」は胴の上下が細くなり真ん中部分が膨らんだものを指します。「額入り」は胴の部分に四角い窓枠のような彫刻が施されたものです。四角いものばかりではなく、丸い円形の鉢として「碗形」、円錐を逆さまにしたような「陣笠」があります。胴の模様には、額入、窓入、帯、彫入などがあります。胴の深さでは「蘭鉢」と呼ばれる背が高く深い鉢があり、「懸崖」仕立てにすることがあり、深さの順で「大深」「中深」「中浅」「浅」「陶盤」があります。

足について

盆栽鉢の短い足には、いろいろな形状があります。主なものには切足、雲足、鬼面足などがあります。「切足」はシンプルな四角い足を指し、雲足と鬼面足はそれぞれ装飾性が高いもので、デザインとしての主張性があります。「雲足」が施された鉢は、胴に描かれた絵との整合性があるとより一層引き立ちます。鬼の面でできた「鬼面足」は少々不気味な気もしますが、魔除けの意味があるとも言われています。

色について

盆栽鉢の色には釉薬の掛かっていない土の色合いを生かした「泥物」があります。これには、こげ茶色の「烏泥」、鉄さび色の「朱泥」、緑がかった「緑泥」などあります。また焼成時の炎にまかせた「窯変」、磨くことによってツヤ出しをした「磨き」、表面に粒状模様のある「梨皮」などもあります。釉薬を掛けたものには泥物よりも鮮やかないろいろな色があります。青味がかったものでは「海鼠(なまこ)」「瑠璃」「均窯」「青磁」などがあり、白や黄色のパステルカラーのものもあります。さらに血の色と称される「辰砂」は、鮮やかで深みのある色として知られています。

鉢選びも楽しみ方の一つ

盆栽とは、「盆」は鉢、「栽」は樹のことを指すので、樹と鉢で盆栽となるわけです。樹が主役と思われがちな盆栽ですが、植えてある鉢も大切で、基本知識として、鉢を知ることも重要と言えます。鉢は、通気性が良いと放熱性もよく、鉢内の温度調節にもなります。さらに適度の保水性と排水性は植物の生育には必須条件となります。これらは陶土の質や焼き方、底穴の位置や大きさなどの鉢の構造、上薬として使われる釉薬のあるなしに大きく左右されます。根の発達には鉢土の温度管理が大切なので、太陽熱も吸収してくれる鉢が良いとされます。これには焼き締め鉢や素焼き鉢が最適です。盆栽に調和する鉢を念頭に置くと、形や大きさが適していることも必要となります。盆栽鉢の種類選びは、盆栽の楽しみの一つと言えます。