盆栽には必ず盆栽鉢が必要です。そんなこと誰でも知っていますが、どんな盆栽鉢を選ぶかによって印象が大きく変わります。単に「樹木」や「果樹」として育てるというのもまた違う目先で楽しいのですが、やっぱり「盆栽」と言えば重要なウェイトを占めるのが「盆栽鉢」なのです。樹が先か、鉢が先か!というのは盆栽愛好家の永遠の課題です。

盆栽鉢と言えば「常滑盆栽鉢」

言わずと知れた常滑盆栽鉢はブランドです。ダントツの人気を誇る常滑焼は愛知県常滑市周辺で発展し、招き猫や急須が有名ですね。古くは中国産の鉢が盆栽と共に渡来していましたが明治時代あたりから常滑鉢が台頭してきています。昭和30年代から大量生産が始まり関東地方を中心に使用されるようになりました。昭和40年ごろから盆栽で皐月(サツキ)を好む人が増えたことから常滑盆栽鉢が広く知られるようになりました。

盆栽鉢の種類や形による違い

盆栽鉢はそこに植えこむ樹木を支える大地としての役割と、その樹木に彩を添える台座や額縁のような役割を持ちます。だからこそ「樹が先か鉢が先か」という盆栽愛好につきものの悩みが出てしまうのです。大自然を一鉢に表現する芸術が盆栽、だからこそ鉢を選びそこなってはいけません。

縁の種類で持ちやすさも変わる

縁の形はそれぞれ「切立(きったて)」「外縁(そとえん)」「内縁(うちえん)」と分類されています。切立は一番シンプルで内にも外にも曲がらないストレートな縁です。外縁は縁が鉢の外側にあるので持ちやすく柔らかな印象を受けます。内縁は内側に織り込まれているので、大きなものでは持つのがちょっと大変ですが中身が抜けにくいので安定しやすいですね。反面植え替えが大変にはなります。

王道の作りは角型の鉢

長方形でやや浅い盆栽鉢が一番好まれます。角にもそれぞれ呼び方があり、角を内側に切り込んだ装飾を施したものを「隅入(すみいり)」と呼びます。逆に角を丸くしたものが「撫角(なでかく)」、角を切り落としたような「隅切(すみきり)」もすっきりとした印象です。

胴は大地の形を決める

南部鉄器の鉄瓶のような鋲が施されているのが「太鼓」です。「クラマ」は割れたお皿のような形で「袋型」はどっしりとしたお相撲さん体形です。「反形」や「陣笠」は底より口が広いシンプルな形です。胴には装飾の施されたものがあり、シンプルなラインが入った「帯」や山水画を彫り込んだ「彫入」も重厚です。

少しだけ見える足が印象を変える

四隅に付いた足は盆栽鉢のチャームポイントでしょう。「高台」と呼ばれますが芸術性が現れる部分です。シンプルな「切足」やひとつ段を付けた「段足」や「雲足」はどんな樹にも合うでしょう。「雲足」は神秘的な風格をもつ雲の装飾があります。極めつけは「鬼面足(きめんあし)」です。芸術性はさることながら細かい手作業で足に鬼面が施されています。玄関などにあったら知らない人は魔除けかと思うかもしれません・・・

意外とカラフルな盆栽鉢

釉薬ですべての印象が整います。釉薬をかけていないいわゆる「無釉」は土本来の色味を生かしたまさに大地を表現します。花物の色を生かすにはこげ茶の「烏泥(うでい)」や「朱泥(しゅでい)」という鉄色がぴったりです。淡い色の「桃花泥(とうかでい)」や深緑色の「緑泥(りょくでい)」も良いですね。表面は燻したものや磨いて艶出ししたもの、「梨皮(りひ)」は梨の皮のザラザラがそのものな仕上げです。
釉薬がかかるともっとバリエーションが豊かになります。宇宙から見た地球のような「瑠璃」はとても美しい色です。深い血赤の「辰砂(しんしゃ)」や緑の「織部」、シックな印象の「灰釉」も印象的な美しさです。月日と共に色が少しずつ変化してより味わい深くなり、盆栽自体の漂う風格も変わってきますね。

盆栽の樹形と深さの関係

盆栽は仕立て方によって樹形が大きく変わるため、鉢の深さ選びも重要です。一番よく目にすることがあるのは「蘭鉢」という深さがある鉢でしょう。崖から延びるような「懸崖仕立て」に見られます。深さを生かして樹が谷底へしなるように仕立てるのに向いています。華道に使用される水盤のような浅い「陶盤」のようにとても浅いものから「大深(おおぶか)」と呼ばれるものまで、樹木と仕立てに合わせた深さを選びます。

味わい深い盆栽鉢選び

どんな樹をどんな仕立て方にするのかということから盆栽鉢選びはもうスタートしています。その逆で、どんな色の鉢がほしいのか、どんな形の鉢を窓辺に置きたいのかなどの鉢選びから入ることもできるのです。まずは盆栽鉢の形や種類を知って盆栽の味わい深さを知るのも良いものです。