盆栽は大きく分けると樹木で作る盆栽「草もの盆栽」とに大別されます。松やケヤキなどで作る松柏盆栽を飾るおもに「下草」と呼ばれる山野草などで作るものを「草もの盆栽」とよびます。大きな樹木である「主木」に寄り添い季節感を表現するために欠かせない下草は一見賑わいを添えるだけのようにも見えますが、下草がなければ風情や情緒が損なわれます。この下草を主役にして作る草もの盆栽は「松や楡ケヤキはちょっと早い」と思ってしまう初心者さんにこそおすすめします。室内で育てるのにぴったりな「苔玉」も草もの盆栽にぴったりです。

イワヒバは和の雰囲気

日本庭園にもよく植えこまれているシダ植物のイワヒバは常緑多年草です。岩場の乾燥したところに自生しているとても性質の強い植物です。草姿も斑入りや複雑な枝分かれをするものなどさまざまで、古典園芸植物のひとつにも数えられています。寒い冬や乾燥が激しい時には歯を強く巻き込んで縮みますが、水をかければ青々とした内側を見せながら元の姿に戻ります。イワマツとも呼ばれ、江戸時代から日本人に親しまれてきた植物です。根洗い仕立てにするのもよいですが、いちばんおすすめしたいのは石付けです。大自然を表現する盆栽ならではの表現方法といえる石付けは、イワヒバの生態や美しさを一番よく表せる仕立てです。いったん植えこんでしまえば少々水やりが行き届かなくてもびくともしない育てやすさが人気です。

縁起の良いフクジュソウ

早春の雪の中に咲く黄色のフクジュソウの花は縁起物として珍重されてきました。落葉性多年草で花は地域差がありますが1月から4月の間に開きます。黄色い花が一般的ですが、紅色の品種もあります。茎は伸びずに短い茎の上に花だけが付き開花しますが、徐々に茎をのばして数個の花を咲かせます。「元日草(ガンジツソウ)」という別名は早春にいちばん早く咲き始める花というところからきているのでしょう。温かい季節に葉を出して栄養を蓄えて冬には地上部が枯れていき、春になるといちばんに花を咲かせるフクジュソウは北海道から九州まで広く自生している日本を代表すべき植物です。お正月用の植え込みでも見かけますが、もし入手したら温かくなるのを見計らって深鉢に植え替えてやると生育が良くなります。

フウチソウはイギリスでも人気

盆栽とは少し違いますが、イングリッシュガーデンにフウチソウはなくてはならない存在です。株になって風になびく柔らかなその草姿が国をたがえても人気があります。日本では関東や東海地方に多く自生しており、葉の表面が下を向いているというおもしろい植生があります。イネ科で性質が強く、夏になると穂状の花を咲かせます。葉色も柔らかな緑色や黄金色・斑入りなどがあり、秋を過ぎると色が少しずつ褪せていくところも季節を感じさせてくれます。寄せ植えにも向いていますが、勢いよく増える性質があるので株分けをする必要があります。
小さい盆栽鉢に植えこんで窓辺に置くととてもさわやかな雰囲気です。苔玉にも向いた植物です。

どこに置いても美しいセキショウ

セキショウ(石菖)はサトイモ科ショウブ属の常緑多年草で、おもに川辺に自生する山野草です。華道の剣山を少し長くしたようなつやのある濃緑の葉が特徴です。草丈が低いのでどこに置いても場所も取らず、どこから見ても美しい緑が目に入るおすすめの草ものです。石付きにしても生えますが、単独で植えるなら浅鉢に植えると見栄えがとてもよくなります。3月から5月ごろに薄緑色の穂のように花を咲かせます。増やすのもとても簡単で、開花後か秋ごろに3年に1回ほど株分けをすると良いでしょう。樹木の盆栽の下草にももちろん使われますが、セキショウの鉢を樹木と一緒に飾ると和の雰囲気が一気に上がります。

冬に黄色の鮮やかな花をつけるツワブキや秋にえんじ色の花穂をつけるワレモコウなど、比較的大きくなるものも草もの盆栽として人気があります。リンドウやノコンギクといった青から紫系統の花が付く野草と寄せ植えにしても季節感を味わえます。単独でも寄せ植えでも楽しめるセッコク(ラン)やサギソウなども花の美しさは群を抜いています。小さいものなら子供の手のようなヤブレガサや極小の白い蝶のような花をつけるヒメユキノシタなどを苔玉に仕立ててみるのも手軽に和のテイストを楽しめます。