自然の景観を手元で楽しむ

いつの時代も趣味として人気のある盆栽。手入れなどは軽作業なので、高齢になってからも続けられ、健康を維持するのに最適とされます。盆栽は、草木を盆栽鉢や盆器に植え、枝ぶり、葉姿、幹の肌、根、鉢やその姿全体を鑑賞したり、自然の風景を植木鉢の中に切り取るように造形します。その植物が自然の景観で見られる姿を、鉢の上で再現するために、剪定したり、枝を針金で固定し屈曲させたり、岩石の上に根を這わせたりと様々な技巧を凝らすのが楽しみの一つです。また盆栽は驚くほど長寿で、松柏類の中には樹齢千年を超えるものまであります。盆栽は生きている限り、少しずつ良くなっていくものなので、樹齢を重ねるほど価値が上がるとされています。園芸と芸術の要素を重ね備えており、それなりの価値が見出されます。数百万円どころか、数千万円、数億円という盆栽もあるほどです。四季の移り変わりや経年変化を、目の前で感じることができる贅沢な趣味ではないでしょうか。

盆栽の歴史

樹を鉢に植えて育てる趣味は、少なくとも2500年前からあったと言われています。盆栽は中国の唐の時代に行われていた「盆景」が平安時代に日本へ入ってきたのが始まりとされています。鎌倉時代には武士階級の趣味として広く普及し、江戸時代になると広く盆栽の栽培が盛んになります。明治時代以降は粋な趣味というものの、培養管理や育成、水やりなどの手間、さらには長い時間が必要なため、愛好者の中心は時間に余裕がある熟年層が多くなりました。戦後から1980年代までは、年寄りの趣味とされていましたが、1990年代以降、盆栽が海外でも注目を集めるようになりました。英語でBONSAIと呼ばれるようにもなりました。盆栽は、平安時代より日本の文化に溶け込み、多くの人々に愛されてきました。細やかな手入れは一見すると面倒なように感じられますが、手先が器用で真面目な日本人には最適な趣味なのかもしれません。

盆栽の種類

盆栽の対象となる樹木は、非常に幅広く、次のようなものが挙げられます。木を中心としたものでは、松柏類の松、真柏、杜松、杉などがあります。実物と呼ばれる実を鑑賞するものでは、ウメモドキ、柿、花梨、ヒメリンゴなどがあります。花物と呼ばれる花を鑑賞するものでは、ウメ、ボケ、サクラ、サツキなどがあり、葉物と呼ばれる葉姿を鑑賞するものでは、カエデ、ケヤキ、ハゼノキ、タケなどがあります。松柏類以外のものは総称して「雑木」と呼ぶこともあります。草を中心としたものでは、寄せ植え、彩花盆栽などの異種の植物や造形物を組み合わせたものがあります。品種ものでは、松の品種の中で、葉の短く、節間が短い「八房」という種類が鉢の中で大木を表現するのに適し珍重されています。これは黒松や五葉松に多いとされます。また石化性と呼ばれる葉や幹の一部が刷毛状になるものが、その形の面白さから珍重されています。これは、石化ヒノキや石化黒松、石化スギが多いようです。

盆栽の樹形

盆栽にはいろいろな樹形があり、それに向けて整えていきます。主なものは次のようなものです。「直幹」は、幹が上に向けて垂直に一直線に伸びている形状です。幹が根元から樹芯へ徐々に細くなっていくのが理想とされています。「模様木」は、幹が左右に曲線を描くように曲がっているものを指します。こけ順が素直で、模様が前後左右にバランス良く曲がっていることが重要とされます。「斜幹」は、一方向からの風に晒されたり、障害物などがあるために根元から斜めに立ち上がり、樹芯にかけて一方向に傾いたものを指します。「吹流し」は、斜幹よりも過酷な環境に晒され、幹も枝も一方向になびき、樹高よりも長く枝が伸びたものを指します。「懸崖」は、海岸や渓谷の断崖絶壁に生えて、幹が下垂して生育を続ける姿を表現したものです。「箒立ち」は、幹の途中から、放射状に細かく分かれ、どれが主幹なのか区別がつかないものを指します。この他、「根上り」「多幹」などいくつもあり、名前が付けられていないものは、「変わり木」と呼ばれています。

日本の盆栽は海外へ

日本では、流行最先端の趣味ではなかったのですが、海外では様相が違ったようです。日本の盆栽は1970年頃から「Bonsai」として、まずヨーロッパで広がり始め、根強い人気を得て、日本から盛んに輸出され、ヨーロッパ産の木を盆栽に仕立てることも一般化しています。1970年代では米国やヨーロッパに盆栽協会が出来ています。1964年に村田憲司「盆栽入門書」がイタリア語に翻訳されたのをきっかけに盆栽の愛好家が少しずつ増えていったイタリア。1980年初頭には盆栽愛好会などが誕生しています。日本にない盆栽のための専門学校まであり、ヨーロッパにおける中心地となっています。1989年に第1回世界盆栽大会が大宮市(現さいたま市)で開催されてい以来、第2回が米国のニューオーリンズ、第3回韓国のソウル、第4回ドイツのミュンヘン、第5回ワシントンD.C.、第6回プエルトリコのサンフアン、第7回中国の金壇市と4年ごとに開催されています。2017年の第8回は初回開催地のさいたま市で開かれる予定です。JETROによると、盆栽と庭木を合わせた日本の輸出額は、2001年の6億4000万円が、2011年には過去最高の67億円に達しています。日本の盆栽文化は奥が深く芸術性も高く、海外でも認められていますので、今後も世界的な発展が期待されます。

挿し木はおもにその樹の次の世代として育てるために行います。親から子へ命をつなぐ作業ですが、挿し木の方法を覚えておくとミニ盆栽が簡単にできるというメリットがあります。幅広い人気のあるミニ盆栽はインテリアにもなじみますね。樹高のある盆栽はどうしても屋外に飾ることになり、室内でも年中鑑賞したい場合はインテリアにもしっくりなじむミニ盆栽に軍配が上がります。手のひらサイズの盆栽鉢は比較的安価で手に入りますし、河原で拾った石などにも植え付けることができます。手軽に作れて飾れる、苔玉に応用するのも簡単です。

挿し木に向く樹種と時期

マツ・楡ケヤキ・モミジ・ウメモドキ・サツキなどが初心者でもできる挿し木向きの樹です。

挿し木の時期のおおよその目安は、落城樹なら芽吹き前の2月から3月が向いています。常緑樹は3月ごろ、針葉樹も2月から3月ごろです。秋以降に適した時期がある樹種もありますし、6月の梅雨時期も挿し木に向いていると言えます。湿度が高く気温が20度前後の梅雨時は発根がしやすいという利点があります。ただ、湿度の高さから挿した葉や茎が腐る危険性もあります。

用土と鉢の準備

一般的な挿し木用の用土は小玉の赤玉土や鹿沼土でかまいません。

鉢は根が出ることを考慮して深さ20センチぐらいの植木鉢やプランターを用意します。鉢底に鉢底用の軽石をひと並べして用土を9分目ぐらいまで入れたら、蓮口を付けたじょうろで水をかけます。鉢底から流れ出る水が透明になるまで水をかけることがポイントです。茶色いうちは「みじん」が残っているので根の出方に支障が出ます。

穂木を作る方法

穂木はどの枝を使うかも重要なポイントです。樹自体が若くてよく日に当たる方向にある枝が良いとされています。また、枝自体が1年から2年ぐらい育っているもので節の間が3ミリから5ミリぐらいで、節の数が多いほど発根しやすくなります。いずれも場合も軟らかく若々しい緑の枝は適していません。

穂木は10センチ程度の長さが確保し、節の数なら3節から5節ぐらいあればよいですね。親木から切り取って置きますが、このあとよく切れるカッターなどで斜めに切り戻します。水中で水切りするとベターです。

切り戻した穂木を水に入れた容器に挿して水揚げします。時間は短くても1時間、長くできるなら半日程度つけておくと良いでしょう。

いよいよ挿し木

菜箸などで用土に対して斜めに穴をあけて穂木を挿します。穂木の切り口を傷めないように気をつけながら、発根する「節」を必ず用土に埋め込むようにします。穂木の間隔は葉っぱ同士が触れるか触れないかぐらいの3センチから5センチ間隔が良く、重なり合っていると腐る危険性があるので注意します。

挿し終わったらじょうろで頭から水をかけます。水で用土と穂木をなじませますが、じょうろには必ず蓮口をつけて土が掘れないように気をつけます。

置き場所と管理方法

雨風や直射日光を避けられる明るい日陰に置くようにします。極端に風通しが悪かったり日が当たらないのは生育状態が悪くなります。

草花などの植物の発根よりも盆栽の樹種は時間がかかります。長いものでは半年かかるような場合もありますが、発根するまでは用土を乾燥させてはいけません。また、どうしても引き抜いてみたくなる気持ちはわかりますが、絶対にそれだけは避けましょう。鶴の恩返しではありませんが、「見てしまったらおしまい」ぐらいの気持ちでじっと我慢してください。発根するまでに鉢を蹴飛ばしたり穂木を抜いたりすると生育しません。

芽が伸びてきたら3日スパンぐらいで徐々に日当たりの良いところに出すようにしましょう。

鉢上げできるころ

穂木の新芽の伸びが良くなって来るのが鉢上げサインです。鉢底も気を付けてみてください。底穴から根が見えていたらまさに鉢上げのGOサイン。根を傷つけないように通常の盆栽用土を入れた鉢に移植ができます。

ミニ盆栽や苔玉にするならこの鉢上げするときが一番適しています。すんなりと小さく伸びた美しい新芽を持つ樹をかわいい盆栽鉢に上げてみてください。